SBIアセットマネジメントが展開している低コスト投資信託「EXE-i(エグゼアイ)」シリーズに、つみたてNISA対応ファンドが登場しました。
iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAのスタートに伴い、インデックスファンドは各社ともに信託報酬を大幅に引き下げ、コスト引き下げ競争が激化しています。
そのような状況で、競争優位性が失われつつあったEXE-iシリーズも、対抗策として本気度の高い「つみたてNISA対応ファンド」を出したきた状況です。
実はこの投資信託、かなり凄いことになっています。
SBI証券の投信マイレージがもらえない
SBI証券は「投信マイレージサービス」を展開しています。
これは、投資信託の保有残高に対して「年率」で毎年SBIポイントを付与するサービスです。
SBIポイントは1ポイント=1円の価値がありますから、投信マイレージサービスの料率分だけ、実質的な信託報酬をさらに引き下げる効果がありました。
つまり、同じ投資信託を保有するにしても、他の証券会社で購入するよりSBI証券で買った方がお得になるという評判のサービスでした。
しかし、投信マイレージはいわばSBI証券が利益の一部を顧客に還元する施策ですから、投資信託(特にインデックスファンド)の手数料引き下げによって利幅が低下する中で、付与される料率も下がりつつあります。
▼通常のファンド
- 投信残高合計が1,000万円未満:年率0.1%の還元
- 投信残高合計が1,000万円未満:年率0.2%の還元
▼低コストなインデックスファンド
- 投信残高に関係なく:一律で年率0.05%の還元
▼さらに低コストなインデックスファンド
- 投信残高に関係なく:一律で年率0.03%の還元
▼EXE-iつみたてシリーズ
- 投信残高に関係なく:0.00%の還元 ← NEW
EXE-i(エグゼアイ)つみたてシリーズについては驚くことに、投信マイレージのポイント付与率が0%になるという異例の事態が起こりました。
これは私たちにとって残念なことではありますが、逆に考えると「SBI証券が利幅ギリギリで販売する渾身の超低コスト投資信託」とも言えるのです。
楽天バンガード投信に対抗
すでに、国内株式・国内債券に投資するインデックスファンドは信託報酬がかなり下がっていました。
しかし、先進国株式や新興国株式を投資対象としたインデックスファンドのコストは、まだまだやや高めの設定となっていました。
そこに一石を投じたのが楽天投信の「楽天バンガード投信」です。
楽天投信投資顧問が、超低コストインデックスファンドとして世界的に有名な「バンガードETF」とタッグを組んで販売する商品。
中身はバンガードETFを買付するというだけの単純なものだが、バンガードETFのコストがあまりに低すぎるため、これまでになかった外国株投信として話題となった。
この商品は私も購入している商品です。
楽天バンガード投信の詳細は「バンガードETF「VT」と「VTI」の自動積立を実現、楽天・全世界株式インデックス・ファンドと楽天・全米株式インデックス・ファンドが凄い」という記事で解説しています。
楽天バンガード投信が外国株式インデックスファンドの低コスト化を実現したことで、SBIアセットマネジメントのEXE-i(エグゼアイ)をはじめ他社も追従をはじめました。
信託報酬を比較
記事執筆時点(2017年12月)の各社の状況は下記の通りです。(いずれも税抜、購入時手数料0円のノーロードファンド)
EXE-i つみたてグローバル(中小型含む)株式ファンド
信託報酬:実質0.139%
投信マイレージ還元率:0.03%
投信マイレージ考慮後のコスト:0.109%
ベンチマーク:FTSE グローバル・オールキャップ・インデックス(円換算ベース)
楽天・全世界株式インデックス・ファンド
信託報酬:実質0.222%
投信マイレージ還元率:0.03%
投信マイレージ考慮後のコスト:0.192%
ベンチマーク:FTSE グローバル・オールキャップ・インデックス(円換算ベース)
eMAXIS Slim先進国株式インデックス
信託報酬:実質0.1095%
投信マイレージ還元率:0.05%
投信マイレージ考慮後のコスト:0.139%
ベンチマーク:MSCIコクサイ・インデックス(円換算ベース)
ニッセイ外国株式インデックスファンド
信託報酬:実質0.189%
投信マイレージ還元率:0.05%
投信マイレージ考慮後のコスト:0.139%
ベンチマーク:MSCIコクサイ・インデックス(円換算ベース)
EXE-i つみたて新興国株式ファンド
信託報酬:実質0.180%
投信マイレージ還元率:0.00%
投信マイレージ考慮後のコスト:0.180%
ベンチマーク:FTSE エマージング・インデックス(円換算ベース)
楽天・新興国株式インデックス・ファンド
信託報酬:実質0.250%
投信マイレージ還元率:0.03%
投信マイレージ考慮後のコスト:0.220%
ベンチマーク:、FTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)・インデックス(円換算ベース)
eMAXIS Slim新興国株式インデックス
信託報酬:実質0.190%
投信マイレージ還元率:0.05%
投信マイレージ考慮後のコスト:0.140%
ベンチマーク:MSCIエマージング・マーケット・インデックス(円換算ベース)
ニッセイ新興国株式インデックスファンド
信託報酬:実質0.339%
投信マイレージ還元率:0.05%
投信マイレージ考慮後のコスト:0.289%
ベンチマーク:MSCIエマージング・マーケット・インデックス(円換算ベース)
現在、手数料の引き下げ競争が激化しているため、今後さらに他社が追従する可能性もあります。
EXE-iと楽天バンガードがほぼ同じ指数、eMAXIS Slimとニッセイが同じ指数となります。
MSCIインデックスとFTSEインデックスの違いについては、「バンガードのETFを徹底比較、VT・VTI・VWO・VYMの違いと利回り」という記事で詳しく解説しています。
若干の違いはあるものの、概ね同じ方向性の指数と考えて問題はありません。
上記を比較してみると、SBI証券での投信マイレージを無視した場合、EXE-iのつみたてシリーズが最強であることがわかります。
ちなみに、SBI証券の「投信マイレージサービス」は(つみたてNISAを含む)NISA口座で購入した投資信託も対象となっています。
あわせて読みたい:
投信マイレージサービスで手数料をさらに安く、SBI証券の投資信託おすすめ商品
EXE-iつみたてシリーズの評価
結論からいうと、
- EXE-i つみたてグローバル(中小型含む)株式ファンド
- EXE-i つみたて新興国株式ファンド
の2つはかなりおすすめできる商品です。
EXE-i(エグゼアイ)の評価についてはこちらの記事で紹介したとおりです。
エグゼアイは一般的な投資信託ではなく、複数のETFに投資するファンド・オブ・ファンズです。参考までに各社の違いをまとめます。
- EXE-i(エグゼアイ)
- 複数のETFに投資するファンド・オブ・ファンズ
- 楽天バンガードETF
- バンガードETF1本に投資するファンド・オブ・ファンズ
- eMAXIS Slim・ニッセイ
- 株式に直接投資して運用するタイプの投資信託
これが、ベンチマークとしている指数や実質コスト面でどのように出てくるのかは運用結果をしばらく見てみないことにはわかりません。
しかし、未来の運用結果はともかく「コスト」の低さだけは間違いありません。
EXE-iつみたてシリーズは、「つみたてNISA」対象商品として販売されていますが、一般販売も行われていますので、今後
- EXE-i グローバル中小型株式ファンド
- EXE-i 新興国株式ファンド
といった「つみたてシリーズではないファンド」は、選ぶメリットが薄くなってくると思います。
積極的な乗り換えは推奨しません
つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)の登場によって、投資信託業界のコストが次々と引き下げられている状況です。
特にインデックスファンドは元々低コストだったものを筆頭に、資産運用会社の利幅は小さくなるばかりで、「これ以上下げることができるのか?」といつも驚いています。
信託報酬が下がることは、私たち個人投資家にとっては嬉しい限りです。
しかし、すでにコストは下がりきっているのも事実。
信託報酬に0.1%以上の差があるのであれば、現在保有している投資信託を売却して、同じ指数をベンチマークとしている新しい投信に乗り換えるのも良いと思います。
しかし信託報酬が0.01%違うからと言って乗り換えをするのは「やりすぎ」の状態です。
投資信託は解約した時点で「投資利益に対する税金」がかかります。
この税金が無視できない金額であり、税金を支払うことによって大切な「複利効果」が失われてしまうのです。
長期の資産形成を考えている場合は、複利効果を最大化するためにも、より低コストな投信が出てきた場合は、「現在保有中の投資信託はそのまま保有したまま、新規により低コストな投信を買付する」ことをおすすめします。
あくまでも以前から持っていたファンドの保有を継続したまま、新しいファンドに乗り換えていくというスタンスです。
EXE-iつみたてシリーズの登場で、少なからずこの商品を購入する人もいるでしょう。
しかし、今後楽天バンガード投信やニッセイ・eMAXIS Slimなどがさらにコストを引き下げてくる可能性も十分考えられます。
つみたてNISAで購入できるおすすめの投資信託は、「2018年スタート!つみたてNISA対象商品でおすすめの投資信託を厳選」の記事で案内しています。
また、iDeCo(個人型確定拠出年金)に関する記事は、「ローリスクde資産運用」のカテゴリで解説しています。
本記事でも取り上げた、eMAXIS Slimについても過去記事で解説していますので、あわせてご覧ください。
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