証券会社にメールアドレスを登録していると、「IPO/POのお知らせ」という表題のメールを受け取ったことがあるという人も多いのではないでしょうか。
POとIPOは「I(アイ)」が付くか付かないかの違いではありません。
この違いを知らないでPOに申し込んでしまうと、ダメージを受ける可能性もあるんですよ。
またPOはIPOと似ているだけでなく、株がディスカウント価格で購入できる「立会外分売」という制度ともよく似ています。
この記事ではPOとは何なのか、IPOや立会外分売とどう違うのか、POのメリットとデメリットは何なのかを紹介します。
POとは?IPO(新規公開株)や立会外分売との違い
POとは「Public Offering」の略で、日本語では「公募・売出」といいます。
すでに上場している企業が、自社の株式を通常のマーケット外で一般投資家に公募し、売り出すことです。
POは「特別にディスカウントした価格で購入できる」ので、投資家からすると魅力があります。
では企業側はなぜディスカウントしてまでPOをしたいのでしょうか。次の項目で「POが行われる理由」について詳しく見てみましょう。
POが行われる理由は資金調達や保有株式の処分のため
POが行われる理由は、おもに次の2つです。
- 追加の資金調達のため新しく発行した株式を売りたい
- 大株主が保有株式を処分したい
以前、<6178>日本郵政がPOで売り出されました。
そのときの理由は、株主である財務省に「郵政の持ち株を売って、東日本大震災の復興資金に充てたい」という思惑があったからだと言われています。
次にPOとIPOの違いを説明します。
POとIPOの違いとは?未上場企業と上場企業で区別される
冒頭で紹介したとおり、POとIPOは字面がよく似ていますね。しかし内容はまったく違います。
POとIPOの違いは、次のとおりです。
PO | ・公募/売出。すでに上場済みの企業が追加の資金調達や株式売却のために行なう ・割引率を提示 |
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IPO | ・新規公開株。未上場企業が資金調達などを目的として行なう ・購入希望価格を提示 |
つまりIPOとPOの違いは、上場しているかどうか。
IPOは株の初心者でも高い確率で大きな利益が見込める、誰もが欲しがる「お宝株」です。IPOについて詳しく知りたい方は、「IPOとは株初心者でも簡単に利益が出せるお宝株」をお読みください。
POはIPO同様、ブックビルディング(需要申告)に参加し、抽選で購入権が得られますが、POは「購入希望価格」ではなく、「ディスカウント率」を提示します。
応募者多数の場合、POは「より低い割引率を提示した申し込み」から当選することになります。
IPOは新しく上場する企業なので注目度・期待値ともに非常に高く、話題性もバツグンです。
そのためIPOは抽選に当たる確率もレアなんですよ。
しかしIPOに比べて、POはあまり人気がありません。その理由は「コチラ」で解説します。
株式市場において「人気がない」ということは、「株価が上がらない」ということであり、ひいては「損する可能性が高い」んです。
POと立会外分売の違いは規模と購入タイミングの差
「株をディスカウント価格で買える」と聞くと、立会外分売を思い浮かべる人もいるでしょう。
しかしPOと立会外分売も意味は異なります。POと立会外分売の違いは、次のとおりです。
PO | ・立会外分売より規模が大きい ・価格決定日の終値から数%ディスカウント価格で買える ・購入申込から実際のPOまで1週間程度かかる |
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立会外分売 | ・POより規模が小さい ・前日の終値から数%ディスカウント価格で買える ・購入申込期間は前日の18時から翌朝の8時ごろまで |
POは購入申し込み期間から株券交付日(売却可能日)まで数日から1週間程度あり、価格決定日からブランクがあることが難点。
PO前の数日間に、大きく売り込まれてしまうケースもあります。
そのため、せっかく値下げされても、ディスカウント価格より株価が安くなってしまうことも起こりうるんです。
その一方で、立会外分売はPOより規模が小さいことが大きな特徴です。また購入申し込み期間も違います。
立会外分売の申し込みは、実施日の前日18時~翌朝8時ごろまで。証券会社によって若干の違いはありますが、午前9時前後には約定通知が届くのでスピーディーです。
申し込み期間は短いですが、前日の終値から数%のディスカウント価格で購入できるため、だいたいどれくらいの利益が出せるか目算が立てやすいことがメリット。
約定通知が来たら、すぐに売ることもできるんですよ。立会外分売について詳しい解説は、こちらをお読みください。
PO株は儲かるの?PO株のメリットとデメリット
すでに上場しているPO株はIPOに比べ、これまでの業績を投資の参考にしやすいです。
このほかにもPOには、次のようなメリットがあります。
- 増資によって新製品の開発に期待できる
- ディスカウント価格で株が買える
- PO前より流動性が高まる
POのメリットは、市場価格より割引した値段で株を買えること。
また公募増資を考える銘柄は、新しい企業活動に意気込みがあると考えることもできます。
中長期的な目線で捉えれば、将来株価が上がるような好材料が出る銘柄だともいえるんですよ。
POのデメリットは、次のとおりです。
- 株式の希薄化が起きる
- 需給が悪化する
株をディスカウント価格で購入できるのは魅力的ですが、その分見過ごせないデメリットもあるんですよ。
POのデメリットについて詳しく見ていきましょう。
POのデメリットは株式の希薄化を嫌気されること
POで増資をすると、株式の希薄化が起こります。
たとえば100億円の純利益があり、100万株発行しているA社が、増資(新しく資金を調達する)のために、さらに30万株売出したとしましょう。
この時1株あたりの利益(EPS※)は少なくなってしまいます。
「1年間の純利益÷発行株式数」で算出される、銘柄の割安度を図る指標のことです。
1株当たりの利益が少なくなる理由は、純利益が変わらない状態で、発行株式数だけが増えることになるから。
増資後・・・100億円÷130万株=7,692円
増資により1株当たりの利益が減ってしまう「株式の希薄化」といいます。
PO後は、すでに保有している株の「1株当たりの価値」も減ってしまうため、株を売りたい人が増え、株価が下がることに繋がってしまうんですよ。
POのデメリット!需給が悪化し売り圧が強くなり株価が下落する
大株主が持ち株を処分する場合、公募増資の場合とは異なり、すでに発行済みの株が売り出されます。
これまで市場に出回らなかった安定していた分が流動的になるため、短期目線では売り圧力のほうが勝り、株価が下落する傾向にあるんです。
安定操作とは?PO株の株価が下がらないための工夫も
このように「どうしても売られやすい」性質のあるPO株。極端に株価が下落するようでは、誰も買おうと思いませんよね。
そこでPO株の場合「安定操作※」という、売られにくいための工夫が講じられています。
株式市場において株価が下がらないように価格操作を行ない、株価を人為的に安定させること。通常なら法律違反ですが、POなどの場合は金融商品取引法で認められています。
安定操作は必ず行なわれる物ではなく、銘柄によっては行なわれない物も。また安定操作が行われるのは、だいたい受渡日の数日前まで。
安定操作が終わってから受け渡しまでの数日間で、株価が下落する可能性もあります。
PO株は慎重に!スケジュールをチェックしてまずは株価予想から
よく証券会社から「POのお知らせ」というメールが送られてくるので、「PO株ってなんだろう、IPOみたいにいいモノかな?」と考える方も多いかと思います。
しかしIPOと違い、POですぐに儲けを出すことは難しいのが現実です。
また立会外分売とは規模や受け渡しまでの期間に違いがあることも説明しました。
実際にPOした銘柄を調べてみると、PO前後に大きく株価を下げているものが多いことがわかります。
中長期目線では将来性に期待できる銘柄であっても、まずはスケジュールをチェックして値動きを傍観し、株の初心者はムリして手を出さないことがオススメです。