「ビットコインの技術について話そう」Blockstreamに聞く <インタビューVol.2>

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ビットコインを議論する上で、開発者とその他の人びとの間には大きな溝がある。それは筆者も例外でなく、また開発者の中でもそれぞれ異なる思想で開発が進められているのが仮想通貨だ。

本稿では、前回(取材日時は11月14日)に続いてBlockstreamのAdam Back氏、Samson Mow氏、Warren Togami氏に対して行ったインタビューの続きを掲載する。徹底してブロックサイズの引き上げに否定的な彼らは、どのように考えているのか。その思考回路を追っていく。

ビジネスではなくリスクの話をしよう

――ライトニングネットワークなどの「レイヤー2」は中央集権化や規制による矮小化を招くと批判されることがあります。

Adam Back(以下、AB): 個人的な意見をいえば、これらの言説は非常に、広範囲かつ印象的に語られる一方で、技術的に見ると、正反対のことが語られているようですね。彼らが手数料について話しているのは、ビッグビジネスへの影響があるからです。手数料とリスクの話を完全に逆さまにしてしまっています。本来はリスクの話だけをすべきです。

私はまた、ビットコインのコミュニティも有益なメッセージを発信できていないように感じます。足の引っ張りあいは、お互いに悪影響を与えるばかりだと言うのに。

Samson Mow(以下、SM): 彼らの主張は誤りです。ライトニングネットワークは明らかに中央集権型ではありません。ビットコインキャッシュにだって実装することができます。ライトニングのチャネルを開いた後、信頼しなければならない第三者は存在しません。誰でもチャネルを開いて、閉じることができます。すべて透明で、不透明なところはありません。

一部の人びとは最初期の例を持ち上げて、それが壊れたことをもってこの技術を中央集権型だと印象付けようとしている節があります。

――オープンなのに、嘘が語られている。

AB: そもそも、なぜオンチェーンがブロック上限を上げたとしてもスケールしないのか。ビットコインやビットコインキャッシュのブロックチェーン上で、株式のような頻度では取引できません。そのような規模のブロックをいちいちブロードキャストしていたら、ネットワークが飽和してしまいます。そしてノードも正常に稼働しないでしょう。

スケーラビリティの話をするならば、その前提を理解しなくちゃいけない。彼らはコンピュータ・サイエンスの複雑な概念を知りません。技術の話をしているのに、技術がどうスケールするのかを知らない。その計算の方法を知りません。スケーリングの計算理論は、スケールリング・ルールです。ですから、スケーリング・ルールをどう説明するかなのです。物理世界の制約を無視することはできません。

ブロックサイズを2倍に引き上げたら、ネットワークには4倍の負荷が掛かります。10倍に引き上げれば、100倍です。ネットワークのコストは、何もデータサイズだけでなくCPUなども考慮する必要がありますよね。

Warren Togami(以下、WT): 「ブロックサイズの上限を引き上げてスケールさせよう」と言ってるのは、これで全世界の取引を処理しようと言っているのと同じです。(SUICAを取り出して)

ビッグブロックに対する考えは

――Scaling BitcoinでGigablockのプレゼンを見ましたが、彼らは世界中にデータセンターを立てて分散化させられる、と言っていました。

SM: かのクレイグ・ライト氏は「Peer-to-Peer」(P2P)の定義を変えているようです。彼によれば、「誰かのコンピュータ」がピアであって、「あなたのコンピュータ」はピアではないと。だから、あなたは誰かのコンピュータを「信頼」しないといけなくなるのに、それがP2Pであると言ってるんですね。

AB: そう、それが彼らの考え方です。BittorrentがP2Pじゃなければ、すぐに訴訟問題に発展したでしょう。彼らはナップスターになろうとしています。完全なP2Pではない、サーバーのあるP2Pですね。

SM: 他のレイヤー2テクノロジーについても中央集権的だと批判があるようですが、これも間違っていますね。サイドチェーンなどの2-wayペグ技術、これらはオープンソースです。Liquid(Blockstreamの製品)について、取引所をつなぐフェデレーションチェーンであるため、中央集権的だといえそうですね。確かにLiquidを使ってあなたはそのようなフェデレーション・チェーンを作ることができますが、そもそもオープンソースです。他の誰かが同じようなものを作ることができる。

誰でもサイドチェーンが作れるんです。誰でも、ドライブチェーンを作れるんです。そうして分権型(Decentralized)のネットワークが形成されていく。オープンソーステクノロジーの素晴らしさはここにあります。同じソフトウェアを使えば、誰でも繋がれるわけです。 

AB: レイヤー2の開発者は主に、ボランティアやプロトコルに興味をもつ個人です。一方、なぜ「ブロックサイズをあげよう、これが一番簡単だ」という人があらわれるのでしょうか。ビットコインのユーザー、取引所もそうですし、そのほかの会社もそうです。これらの人びとの多くは通常、プロトコル開発に携わることはありません。技術をあまり理解していなくても、オープンソースのソフトウェアを使えばビットコインを使うことができます。

――プロトコルを触らずにビットコインを語ることはできません。

技術が話し合われないと進まない

AB: これが不幸を起こしてしまいます。ブロックの上限に達し手数料が上がってきても、ブロックサイズを上げる以外の方法を思いつきません。キャパシティを大きくする方法はたくさんあるんですよ。実際に改善するための取り組みも行われています。ドライブチェーンや、サイドチェーンなどもそうです。

SM: ロケット技術者に「燃料タンクを大きくすれば遠くまで飛ばせるのに」と言ってるのと同じことですね。

AB: Segwit2Xの取り下げについても、無責任だと思いませんか。ニューヨーク協定(NYA)に署名したCEOたち、彼ら6人は「B2X Futures」(ビットコイン2Xの先物)を買うべきでした。彼らは、おそらく誰ひとりとしてリスクをとっていない。

これは「画期的なジェット機をつくった!」と宣伝している会社の経営者や技術責任者が、「いやいや、私は後でいいからお先に乗ってください」と試乗を拒否しているのと同じ構図です。そして、試験飛行の前に計画を撤回した。

過去のフォーク・クライアント、たとえばXTやClassic、Bitcoin Unlimitedなどは、開発者を雇用することで獲得しようとしてきました。私はそういう話をビットコインの開発者から何回も聞いたことがあります。彼らが揃って言うのは、技術を少しでもわかっていたらありえないようなことを求められ「No」を返したということ。プロトコルを理解している開発者ほど、彼らの要求が物理的に困難であることを知っています。そしてプロトコルの詳細に精緻していない開発者は、「できる」と言ってしまう。このような人びとの多くは、得てしてビットコインのコンセンサス・レイヤーを触ったことがありません。

――先程の飛行機の話に繋がるわけですね。

WT: レイヤー2が中央集権的だと批判に関して、結局のところ何が問題なのかというと、イーサリアムがハードフォークを緊急で行うことができるということは、彼ら開発チームが絶対権力をもっている、ということの裏返しでもあるわけです。つまり、分権的であることが本質的な価値であるはずのブロックチェーンが、イーサリアムやビットコインキャッシュの場合は、レイヤー1(オンチェーン)ですら中央集権的なのです。

イーサリアムは、Vitalik Buterinの鶴の一声でレイヤー1の開発方針が決まります。ビットコインキャッシュは、一部のマイナーや投資家の一声が大きな影響力をもちます。レイヤー2が中央集権的だと言う一方で、レイヤー1を中央集権で固めてしまえば、元も子もありません。

ビットコインの開発に関して言えば、確かに「失敗するには大きすぎる」という面もあります。それが開発スピードの遅さにつながっていることも事実です。しかし、それはネットワークの安全性を最優先にするという開発手法をとったビットコイン・コアの宿命であり、これがその他の中央集権的に開発が勧められている仮想通貨との最も大きな違いでしょう。


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